マスカレードに誘われて



イヴの部屋。
椅子に座り、紅茶を注がれるのをじっと見つめながら、イヴが不思議そうな顔をする。

「何か、こんな扱い受けるの慣れてないから緊張するなぁ……」

「そう言わずに、もっと気を楽になさってください」

そう言って、笑いながら侍女は彼女に紅茶を差し出す。
イヴは紅茶を一口啜ると、顔を綻ばせた。

「美味しい!わたし、こんなに美味しい紅茶を飲んだの、初めてだわ!」

「ありがとうございます。この茶葉は、上流階級の貴族しか口にすることができないものですよ」

「そうなんだ……」

少し悲しそうな顔をする。
それを見た侍女は、慌てて頭を下げた。

「申し訳ございません!無礼な事を言ってしまって……」

「大丈夫よ。何も気に病むことなんか無いわ」

「そうですか……」

「だから、そろそろ準備をしましょう」

困惑している侍女に向かって、イヴは優しく微笑んだ。

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