マスカレードに誘われて
侍女は、クローゼットからドレスを取り出し、イヴに見せる。
紫を基調とし、所々にある橙色のリボンが綺麗に映えている。
イヴは一瞬にして、そのドレスを気に入った。
「イヴ様は質素なものが好きだとお聞きしましたので、それなりに装飾を抑えてみました」
「素敵ね……見たことが無いわ」
目を輝かせ、恍惚とした表情でドレスを見る。
侍女は、申し訳なさそう彼女に訊いた。
「失礼ですが……今まで、どんな生活を送ってきたんですか?」
「……え?」
「今のイヴ様は、はっきり言って貴族らしくないです。もう少し堂々とされたらいかがでしょうか?」
「……」
イヴは黙り込み、真剣な目で侍女を見つめる。
一目見ただけで、ここまで彼女の事を理解してくれた人はいなかった。
「……貴女、名前は?」
「エリカ・ローラントと申します」
「ローラント……キースの妹さんかしら?」
「はい。仰る通りでございます」
それならしょうがない。
イヴは納得をした。