マスカレードに誘われて
「貴女の言う通り、わたしたちは貴族として生活して来なかったわ」
「そうなのですか?」
イヴの髪を解かしながら、エリカが尋ねる。
イヴはあまり頭を動かさないようにしながら頷いた。
「やっぱり、悪魔の日に生まれてきたのが原因よね。生まれたその日、ロイとイヴの名は世間から抹消されたわ」
「なぜ……」
「悪魔から存在を消すためだね。わたしはアリス、ロイはマークと名乗り、ホーキング家の使用人に成り済ましてたの」
「そうなんですか……」
櫛で髪をすきながら、相槌を打つ。
イヴは下を向いたまま、話を続ける。
「それでいいと思ってた。それなのに、突然本来の名前を復活させて、誕生日パーティーを開くと言う。
当たり前だけど混乱した」
「……」