マスカレードに誘われて
「イヴもこっちへ」
イヴに向かって手招きする。
彼女は首をかしげ、ジェームズに近付いた。
父を見上げる二人。
ロイに至っては、彼とあまり背丈が変わらない。
そんな二人をまじまじ見ると、ジェームズは二人を抱き寄せた。
「今まで何もしてあげられなくてごめん。でも、君達はしっかりと育ってくれたね。ありがとう……愛してるよ」
「僕も」
「わたしもよ」
今まで直接感じられなかった父親の愛に、心が温かくなる。
陳腐な慣習が、家族を妨げていた。
それでもやはり、離れていても心の距離は近かったのだ。
ジェームズは二人を離し、再び優しく微笑んだ。
「さあ、行っておいで。夜明けは近いけど、それまで楽しんでくるといいよ」
二人は頷き、それぞれの目的へ向かって歩き出した。