マスカレードに誘われて
「グランド公!」
立派な髭をたくわえた男に向かって、二人は挨拶をする。
それを見た彼は、満足そうに笑った。
「二人とも、大きくなったね」
「いやぁ……それはまあ、最後にお会いしてから5年も経っておりますから」
「ロイ、しっかりしたね。マリー様が亡くなってから、だいぶたくましくなったのではないかな?」
「ありがとうございます」
そして、ロイはもう一度頭を下げた。
母親であるマリーを亡くしてから、5年が経つ。
ブロンドの髪を紫色のリボンで二つに結んだ、綺麗な母親だった。
形見として残してくれた紫色のリボンは、彼らの宝物であった。
グランド公とは、マリーの葬式以来会っていない。
父のジェームズと母のマリーと親好が深かったらしく、何かと気にかけてくれていた。