マスカレードに誘われて

「何も知らない無垢な双子に迫る影」

例の回廊で、少女が歌うように言葉を紡ぐ。
一方で、二人はほの暗い廊下を歩く。

先程の事はホール内だけではなく、屋敷全体にまで及んでいたことらしい。

「黒猫が小夜曲を謡う」

二人の目の前を黒猫が横切った。

「もう見えない……」

回廊で、湖を見つめながら少女が悲しそうに呟く。
彼女は庭に伸びている階段に腰を掛け、湖面を見つめた。

「こんなところにいたのか、エリカ」

背後から名前を呼ばれ、少女――エリカは立ち上がった。
そして、声の主を振り返る。

「あら、どうしてこんなところにいるの?」

声の主に問い掛ける。
彼女は目を三日月にした。

< 34 / 164 >

この作品をシェア

pagetop