マスカレードに誘われて
「何も知らない無垢な双子に迫る影」
例の回廊で、少女が歌うように言葉を紡ぐ。
一方で、二人はほの暗い廊下を歩く。
先程の事はホール内だけではなく、屋敷全体にまで及んでいたことらしい。
「黒猫が小夜曲を謡う」
二人の目の前を黒猫が横切った。
「もう見えない……」
回廊で、湖を見つめながら少女が悲しそうに呟く。
彼女は庭に伸びている階段に腰を掛け、湖面を見つめた。
「こんなところにいたのか、エリカ」
背後から名前を呼ばれ、少女――エリカは立ち上がった。
そして、声の主を振り返る。
「あら、どうしてこんなところにいるの?」
声の主に問い掛ける。
彼女は目を三日月にした。