マスカレードに誘われて
「もし私が生き延びたら……その時はまた、剣の手合わせをしてください」
「……分かった」
「兄様も、どうかご無事で。
あの二人を絶対に守ってください!」
「……心得た」
悲しそうに彼の胸に顔を埋めるエリカ。
そんな彼女の頭を、キースは優しく撫でた。
その時、湖面が激しく波打った。
二人は離れ、湖面を見据える。
「……時間だわ」
エリカは呟き、キースの方を向いた。
彼も一つ頷き、真剣な顔をする。
そして、彼女は湖の方へ足を踏み出す。
「エリカ」
「……何?」
エリカが振り返る。
キースは顔を綻ばせ、言った。
「お誕生おめでとう」
「……ありがとう、兄様」