マスカレードに誘われて
第一章 誘う月
夜への道筋
いつも住んでいる屋敷から、馬車に揺られ数十分。
湖の畔に、ホーキング家の館があった。
外観、内装共に、ゴシック式。
中央ホールのステンドグラスから、七色の光が差し込んでいる。
パーティーを開くためにだけあるこの屋敷。
今回も例外ではない。
「ロイ様!そろそろお戻り下さい!」
「あともうちょっとだけ!」
「あともうちょっとと言われてから、既に30分は経ってますよ!」
「あー、ハイハイ」
臨時に派遣された使用人を適当にあしらい、館内を散策する。
そろそろ一周したような気もするが、まだそうではないらしい。
彼が歩く度、下の方で束ねたクリーム色の髪がしなやかに揺れた。