マスカレードに誘われて

彼女が蝶番に触れた瞬間、扉が光を帯びた。

その光は爆風と共に、四方八方へ飛び散った。
燭台の蝋燭が揺れ、幾つかの火が消える。

二人は風に圧され、尻餅をついた。
その拍子に、二人のつけていた仮面が外れてしまった。

「いけない!仮面が!!」

ロイが手を伸ばすと同時に、仮面は闇に溶けるように消えてしまった。

同様に、イヴの仮面も見当たらない。
彼女の手も、虚しく虚空を掴んだ。

「……」

辺りがしんとする。
二人は顔を見合わせた。

「何も……無いみたいね」

「そうだな」

ほっと息を吐いた瞬間、扉の向こうから物音が聞こえてきた。
その音は、どんどんこちらに近付いてくる。

騒音は更に大きくなり、扉の蝶番が鳴った。

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