マスカレードに誘われて

「これは……凄くよろしくない状況になったんじゃ……」

目を見張りながら、扉を凝視する。
次の瞬間、二人は跳ねるように立ち上がった。

そして扉に背を向け、階段を駆け上がる。
すぐ後ろから聞こえてくる物音に、二人は恐怖を覚えた。

何とか階段を上りきり、廊下の真ん中に来たところで息を整える。
その時、階下から扉が蹴破られるような、激しい音がした。

驚いて、勢いよく振り返る。

「なっ……本当……これ……」

言葉が出ない。
身体が言葉を発することを許してくれない。

地下の階段から這い上がってきたのは、無数の"影"だった。

人の形をしているにも関わらず、纏っている空気が異質だ。

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