マスカレードに誘われて
何も返す言葉がない。
それが辛くて、ロイは彼女から目を逸らした。
訪れる沈黙。
辺りをふわふわと本が浮いている、異質な空間。
「どうしたらいいのかな……」
不安そうな顔で、イヴは近くにあった本を開いた。
挿絵は動き、彼女を襲ってくるように手を伸ばす。
イヴはそれに構わず、ページを捲る。
「僕もよく分からないけど……取り敢えず、今夜だけ生き残れればいいんじゃないかな?」
ロイが床に座り込む。
彼は浮いている本に目をやりながら、呆然と呟く。
「昔読んだ絵本みたいに、朝靄と共に全て消えていくのかな……なんて」