マスカレードに誘われて
呆然としているロイの肩を叩く。
彼は先程から甲冑を見つめ続けている。
「このままだと見付かってしまうわ。行きましょう」
「そうだね……」
イヴに促され、ようやくその場を動いた。
風もないのに蝋燭の火が揺れ、今にも消えそうだ。
そのような廊下をひたすらに進んでいく。
今朝までは豪華で美しいと思っていた赤い絨毯。
それも今は、禍々しく感じられる。
「まだ暗い……」
窓の外を見ては、イヴが切なそうに呟く。
彼女は首を振り、前を見据えた。
大丈夫なのか。
体力的にも辛くないのか。
それをイヴに聞くことは出来なかった。