マスカレードに誘われて

彼は頭を働かせ、ぽつりぽつりと言葉を発した。

「確か……回廊を通っていけば……」

湖がすぐ側に見える、美しい回廊を思い出す。
秋だと言うのに、多種多様の花が咲いている不思議な庭。

そこを通って、調理室裏の階段を上ればホールに着く。

「うん。やっぱり、回廊を通らなければホールに行くことはできないね」

「そうなの?」

「後はそこの階段を上るしかない」

「それは無理ね……じゃあ、回廊へ向かいましょう」

玄関ホールに背を向け、来た道を戻ろうとするイヴ。
ロイはそれを制し、自分が先に足を踏み出した。

それを見たイヴが、不思議そうな顔をした。

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