マスカレードに誘われて
回廊へ続く廊下を歩く。
ただだんまりと、何も話さずに歩く。
夜の静寂だけが、廊下を支配していた。
その時、不意にどこからか音楽が聞こえてきた。
二人は足を止め、辺りを見回す。
しかし、音楽が聞こえてくるような部屋もない。
「何だろう……」
恐怖に駆られたイヴが、ロイにピタリとしがみつく。
二人はその場から動けずにいた。
どこからともなく聞こえてくる悲しい旋律。
別に、何も起こらない。
ロイは足を踏み出した。
「大丈夫なの?」
イヴが心配そうに、彼の袖を引っ張る。
ロイは彼女を安心させるように、笑顔で頷いた。
「大丈夫さ。危害は無さそうだし、このまま進もう」