マスカレードに誘われて
彼が歩く。
それに倣って、彼女も歩く。
彼らが足を進めるほどに、音楽が大きくなっていく。
警戒しながら、ゆっくりと進む。
蝋燭が揺れる。
心なしか、音に合わせて蝋燭の炎に強弱がついている気がする。
ふと、ロイは何かに気が付いたように足を止めた。
耳をすませ、左を見る。
そして彼は、隣にいるイヴに呼び掛けた。
「イヴ、見てごらん」
「何かあったの?」
「音楽の正体が分かったよ」
そう言って、彼は壁の方へ近付いていく。
イヴも恐る恐る、壁へ歩み寄った。
壁には、一枚の絵画が掛かっていた。
丘の上でヴァイオリンを弾く青年を描いた絵だ。