マスカレードに誘われて
「音楽は、この中から聞こえてきたんだ」
「そうだったのね」
イヴの表情も柔らかくなる。
その時、ヴァイオリンを弾いていた青年がこちらを振り向いた。
演奏の手が止まり、音楽が止む。
二人は一歩後退った。
「おやおや、お客様ですか」
絵画の中の、ヴァイオリン弾きが尋ねてくる。
二人は何の反応も示さず、ただ彼を眺めていた。
「私、ルーベルトと申します。貴殿方は?」
「……僕はロイ。こっちの女の子は、イヴ」
「ロイ様、イヴ様ですね?」
ルーベルトの問い掛けに、二人は同時に頷く。
そんな二人を見て、彼は軽く笑った。