マスカレードに誘われて
「そんな警戒せずに、軽快な心持ちでいてください」
「そう言われても……」
「私は、この場所から出ることが出来ません。出来ることと言えば、この場所で音楽を奏でるのみ。
貴殿方には手出し出来ません」
「それは本当?」
イヴの問いに、彼は笑顔で頷く。
そして、ヴァイオリンを構えた。
「ここで会ったのも何かの縁。貴殿方に、一曲差し上げましょう」
彼は大きく息を吸うと、おもむろにヴァイオリンを弾き始めた。
廊下に響き渡る、美しい音色。
先程の悲しい物とはうって変わり、華やかで美しい旋律。
思わず二人の顔も綻ぶ。