マスカレードに誘われて
音に合わせ、蝋燭が揺れる。
ふわふわと花瓶が漂い、中の花がこちらへ近付いてくる。
雲の隙間から、月が顔を覗かせたらしい。
長い廊下を月明かりが照らす、幻想的な空間が出来上がった。
ロイは浮いている花を一つ取り、イヴへと向き直る。
「言いそびれた事があるんだ」
「何を?」
「イヴ……お誕生日、おめでとう」
彼は手に持っていた花をイヴに差し出した。
彼女は嬉しそうにそれを受け取ると、にっこりと笑った。
貼り付いたような笑みではなく、純粋に心から笑っているようだった。
「ありがとう。ロイも、お誕生日おめでとう!」
「ありがとう!」
ロイも楽しそうに笑う。
その様子を見たルーベルトは、先程よりヴァイオリンの音色に抑揚をつけた。
束の間の休息。
二人は幸せな気持ちになった。