マスカレードに誘われて



「悪魔の子、ですか」

曲を弾き終え、ヴァイオリンを下ろしたルーベルトは言った。

「何故、そのようになったのか……私には理解できません」

「どういうこと?」

ルーベルトの言葉を受け、ロイが尋ねる。
ルーベルトは心底残念そうな顔で首を振った。

「人間の考えることは、どうも分かりません。どうして聖なる御子が、悪魔の子と呼ばれなくてはいけないのでしょうか」

「僕に聞かれても分からないよ。生まれたときから、そう言われてたから」

「そうですか……」

気を落としたように、丘へ座り込む。
ロイは、何だか彼を傷つけたような気がしてたまらなかった。

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