マスカレードに誘われて
「そろそろ戻れだってよ」
「でも、まだ全部見てないわ」
「僕もそうなんだけど……皆が五月蝿くってさ」
ロイが親指で扉を指す。
準備をしているのか、外から慌ただしい音が聞こえてくる。
「そうね。そろそろ戻ろうかな」
イヴは立ち上がると、近くにあった本を2、3冊引き抜き、ロイの隣に並ぶ。
彼は扉を開け、右左と辺りを見回す。
別に追い掛けられている訳ではないが、何となく警戒してしまう。
辺りに誰もいない事を確認すると、イヴを連れて廊下に出る。
「ロイ様、イヴ様、見付けました!早くお戻りになって下さい!!」
「うわっ!見付かった!」
駆け付けてくる家政婦達に背を向け、ロイは走り出した。
少し遅れてイヴもついてくる。