マスカレードに誘われて

底冷えする寒さが、二人を襲う。
それが自然の現象なのか、精神的な物なのかは分からない。

ロイがイヴの後方を見た瞬間、声をあげた。

「イヴ!早くこっちに!」

血の気の引いたロイの顔。
ただ事では無いと、感じ取ったらしい。
ドレスの裾を上げ、イヴがロイの側による。

そして、彼女も振り向いた。

回廊への扉の隙間から延びてくる、無数の"影"
それは手の形をしてあり、ロイ達の方へ掴み掛かろうとする。

『逃げなさい!手の届かないところへ!!』

「!!」

鎧の声が、ロイにも届いた。
彼等は次の瞬間、鉄砲玉のようにはね上がって走り出した。

< 81 / 164 >

この作品をシェア

pagetop