マスカレードに誘われて
底冷えする寒さが、二人を襲う。
それが自然の現象なのか、精神的な物なのかは分からない。
ロイがイヴの後方を見た瞬間、声をあげた。
「イヴ!早くこっちに!」
血の気の引いたロイの顔。
ただ事では無いと、感じ取ったらしい。
ドレスの裾を上げ、イヴがロイの側による。
そして、彼女も振り向いた。
回廊への扉の隙間から延びてくる、無数の"影"
それは手の形をしてあり、ロイ達の方へ掴み掛かろうとする。
『逃げなさい!手の届かないところへ!!』
「!!」
鎧の声が、ロイにも届いた。
彼等は次の瞬間、鉄砲玉のようにはね上がって走り出した。