マスカレードに誘われて

漆黒の影が、廊下の床や天井などを覆い尽くしていく。

キースは時折、後ろを振り返りながら眉を寄せた。

「ロイ様、このままでは追い付かれてしまいます!」

「うー……」

一生懸命走っているものの、運動が苦手なイヴが彼の足を引っ張る。
彼女の方を見るが、既に息があがっている。

「キース、これ持って!」

ロイは、自分の剣をキースに渡した。
彼が剣を受け取るのを確認すると、イヴの方へ近寄る。

「よいしょっ」

「!?」

それは突然の事だった。
ロイはイヴを、軽々と抱き上げた。

突然の事であたふたするイヴをよそに、ロイはキースに追い付こうと走り出した。

すぐ後ろには影と言う名の闇。
呑まれるわけにはいかない。

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