マスカレードに誘われて
「このままじゃ、挟み撃ちになっちゃう!!」
ロイが絶望的な声をあげる。
腕の中で、ピクリとイヴが反応する。
「あそこの部屋に入りましょう!」
キースが指すのは、右側にある一枚の扉。
何の部屋だったかは、全く覚えていない。
「でも、助かると言う確信はないよ!」
「それでも、挟み撃ちになって引き込まれてしまうよりかは、助かる確率は上がると思います」
「……」
キースの言っていることは、間違っていない。
彼の提案にどうこう言うより、今はそれにすがるしかないようだ。
ロイは頷き、その扉へと駆け寄った。
キースが扉を開け、彼は慌てたように部屋に入った。
続いてキースが部屋に入る。
彼が扉を閉めると同時に、廊下から轟音が轟いてきた。
割りと厚い、この部屋の扉を鳴らす。
キースは扉から一歩、足を引いた。
ロイはイヴを下ろし、扉の方を向く。
辺りに訪れるのは、永遠とも思える静寂。
何の音も聞こえてこない。
誰も扉に近付こうとする者はいなかった。