マスカレードに誘われて
「どうした?」
ロイが立ち上がり、彼に尋ねる。
キースは振り向き、いつものように優しく微笑んだ。
「いえ、何でもありません」
しかし、笑う顔はどこかぎこちない。
そんな笑顔を向けられて、ロイが納得をする筈がなかった。
「なぁ、キース」
「……何でしょうか」
「どうして、今夜はあそこの回廊は通れないんだ?」
「それは――」
「それに、お前の隠している諸事情って何?」
「……」
キースが笑顔のまま固まる。
ロイは一歩、足を踏み出した。
「そんなに、僕達に言えないこと?」
「それは……」
「あそこの回廊で、何が起きているんだ?」
「……」