マスカレードに誘われて

そう言うイヴの顔は、どこか悲しそうに見えた。

それ以上、何を理解したのか訊いてはいけない気がした。
ロイは口を閉じ、彼女を見つめる。

「ロイ、わたしたちはね――」

イヴが口を開いた瞬間、部屋の明かりが全て消えた。
目が慣れず、慌てふためく三人。

「ロイ、いるの?」

「いるよ!キースは?」

「ここにいます」

「明かりつけなきゃ!」

「少々お待ちを。今――」

「キース?」

急にキースの声がしなくなった。
静かして耳を澄ませる。

微かにドアの開く音が聞こえた。
廊下も明かりが消えたのか、こちらからは何も見えない。

木の擦れる音が響き、その場にいる三人は戦慄した。

誰かが来る。

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