マスカレードに誘われて
「キース?」
「静かに」
イヴが小声で呼び掛ける。
キースはそれを制し、唇を噛み締めた。
床を歩く固い足音が聞こえてくる。
音は徐々にこちらへ近付いてきているように思われた。
「……」
ただ黙り、早く過ぎ去ってくれないかと目を瞑って祈るばかり。
やがて、足音が止まった。
過ぎ去ったのかと、安堵の溜め息をつく。
「いっ――」
刹那、ロイの頭に衝撃が走った。
何かで後頭部を殴られたらしい。
「知ることとは、同時に何かを失うことでもある」
「だ……れ……」
聞いたことがあるような、無いような声。
誰かが残した不思議な言葉。
耐えられず、ロイの意識は闇に落ちた。