マスカレードに誘われて



「――様、ロイ様」

誰かが呼び掛ける声がする。
ロイはゆっくりと目を開けた。

薄暗い天井が目に入る。
顔を横に向けると、キースとおぼしき足がぼんやりと見える。

何回か瞬きをすると、ようやく焦点が合ってきた。

「あれ、何があったんだっけ……?」

身体を起こし、首をかしげる。
彼の後頭部に鈍痛が残っている。
ロイは頭を押さえた。

「あぁ、殴られたんだ……」

明かりが消え、足音が聞こえてきた。
そして、殴られて気絶した。

「ロイ様……」

何やら、キースも青い顔でロイを見下ろしている。
手に持っている燭台の炎が揺らめく。

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