マスカレードに誘われて

彼の尋常ならざる表情に、ロイの背筋に悪寒が走った。

「何かあったの?」

「……」

苦い顔でロイから目を逸らす。
ロイは不思議そうに辺りを見回した。

そして次の瞬間、彼の顔から血の気が引いた。

「いない……」

足りない。
人が一人足りない。
正確には、女の子が一人足りない。

「イヴは!?」

ロイが鉄砲玉のように立ち上がる。
キースは苦しそうな顔で、首を振るばかり。

「そんな……」

「申し訳ございません。私が気が付いたときには、既に……」

話の文脈から、キースも何者かに襲われて気絶していたらしい。
深々と頭を下げるキースを責めることは、出来なかった。

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