マスカレードに誘われて

「いいよ。キースのせいじゃない」

「しかし……」

「状況が状況だったんだ。誰にも防げないよ、あれは」

「……」

「しょうがないことだったんだ」

と冷静に言いつつも、ロイは混乱していた。

どうして、こんなことになってしまったのか。
状況が状況とはいえ、彼女を守ることくらい出来たのではないか。

「知ることとは、同時に何かを失うことでもある……か」

「何ですか?」

「いや、倒れる前に誰かが言ってたんだけど……」

顔が見えないせいで、誰が言っていたのか分からなかった。

知ることとは、同時に何かを失うことでもある。

イヴは全てを知ってしまった。
そして、理解してしまった。
だから、失われた。

「だとしたら、彼女は何を失ったんだ?」

「……私にも分かりません」

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