マスカレードに誘われて
「今宵の事は、全て調書で知りました。そして、これは侍女達の噂ですが……今宵の舞踏会、グランド公が提案なさったそうです」
「え?そうなの?」
「はい。ロイ様は気付かれていないようですが、ここ数日、よくグランド公が屋敷に……」
「なるほどね……」
顎に手を当て、考える。
グランド公はロイ達にとって、もう一人の父親と言っても過言ではない。
親切心から今宵の事を提案してくれたに違いない。
そう思いたかった。
「そう言えば、グランド公の後押しがあったから、今夜みんな来てくれたらしいよ」
「それをどこで?」
「舞踏会に来てた人が言ってたよ。やっぱり、ハロウィンってこともあって、いい顔はしていなかったけど」
「やはり、そうでしたか……」
キースが近くの部屋の扉を開けながら相槌を打つ。
燭台を掲げて覗いてみるも、人影は見当たらない。