結婚してください。パンツ見せてください。
彼女の過去が明かされるようです。
部活の朝練。
てっきり昴の正体(変態)がバレていると思った。
しかし。
「安心しろ、言わないから」
どうやら進が彼女の有栖川に口止めしたようだ。
ありがたい。
「ありがとう、進」
「いいって。ただ、ちょっと頼みがある」
「頼み?お前が俺に?珍しいな」
「頼むなら土下座ですよ、加藤部長。すごく似合うと思います」
「そうか?俺はお前の方が似合うと思うがな。ついでだから今の発言を土下座して謝れコラ」
昴のせいで進の毒舌ツッコミに磨きがかかるな。
「実はな、迎えにいってほしい部員がいるんだ」
「私達は天使じゃありませんよ」
「そっちの迎えじゃねえよドアホ。つかお前はどっちかというと死神だろ」
「進、無視しろ。話が進まん」
「わかった」
――話を聞いたところ、外国から来た転校生がサッカー部に入るらしい。
そいつが今迷子で交番にいるから迎えにいってほしい、というものだ。
そこまではわかる。
だが、一つだけ気にかかることがあった。
「…………」
「まだ思い出せないんですか」
「あぁ」
その転校生が昔に俺と友達だったらしいが、俺はまったく覚えていないんだ。
「見た目が金髪で青い瞳、無駄にでかい背……か」
「ハーフと言ってましたが、普通に見れば外人にしか見えませんね」
「子供の頃よく遊んだようだが、まったく思い出せないな」
名前は蓮華(レンゲ)というらしい。
名前を聞いても思い出せないが。
「……というか、昴」
「はい」
「なぜお前が俺といる」
「何を言っているんですか。私と東藤さんは二人で一つでしょう」
「二つだ」
俺は進に頼まれてきているが、昴も一緒にとは言われてない。
「お前いつも授業は受けているのか」
「性学習なら」
「それ以上知識を蓄えてどうする気だ」
目眩がしてきたな。
そういえば、こいつ大体は俺のストーカーしてるから教室にいないよな。
そんな生活で友達ができるのか?
……ん?友達?
「……昴、お前ほとんど教室にいないが。友達はいるのか?」
「さぁ。話したこともありませんので」
「クラスメイトの誰とも?」
「はい」
「どうして……、!」
そうか。
以前奈々緒から色々な噂があると聞いていたが、それで誰も寄ってこないのか。
「……昴」
「なんでしょう」
「今から気に障ることを聞く。嫌だったら答えるな」
「かしこまりました」
聞いてはいけない気がした。
だけど聞きたい。
そんな軽い好奇心で俺の口は動いた。
「お前、親はいるのか?」
その時の昴は、とても驚いていた。
初めてみた昴の表情の変化に、俺はつい見いってしまった。
いつも人形のように、顔色一つ変えない昴。
その顔が動く様子が、なにかとても珍しいものを見ているようで。
だが、それは一瞬で元の無表情に戻る。
「父と母はいません。昔に死んでいます」
「…………そうか」
「どうしてそのようなことをお聞きになったのですか?」
「……いや」
夢のことを話す気にはなれなかった。
話しても話さなくても、今は関係ないからだ。
今そんな話をしても、なんの意味もない。
「噂で聞いて。ただ、気になっただけだ」
気にしないでくれ。
そう言おうと思ったが、昴がそれを遮るように言った。
「話しましょうか」
「……何をだ?」
「親のいない理由。知りたいのでしょう?」
「…………」
「ご心配なく。結婚相手に自分のことを知っていただくのは当たり前ですから」
「ツッコミづらい雰囲気でボケるな……、おわっ!」
ツッコミを入れると同時に、俺の目の前には刃物が現れた。
刃物といっても包丁だ。
なぜ昴が包丁を持っているのか不思議だがな。
昴はゆっくりと口を開いた。
「私は、人殺しです」