結婚してください。パンツ見せてください。
学校に着いたのは、出発してから三時間くらい経った時だった。
先生には連絡してあったものの、次からは早くするようにと注意を受けてしまった。
生徒会長の俺が、注意を受けてしまったなんて……。
「東藤さん、どうなさいました」
時間がかかった原因が話しかけてきた。
昴が蓮華をからかったせいで、余計に時間が食われたんだ。
しかし、俺が昴に過去の話を問いかけたせいもあるから怒るに怒れない。
「……なんでもない。教室に行こう」
「ハゲはどうなさいますか。なにやら東藤さんに用があるみたいですが」
「ハゲが?」
「ハゲのことですから、またライバルとか言って、何かされるかもしれませんよ」
「あまりハゲを悪く言うな。覚えてはいないが、昔は友人だったみたいだし。ハゲだって照れてるかもしれない」
「ハゲが、ですか……?」
「普通にハゲって呼ぶなああああああああああ!!」
うお、なんか来た。あ、蓮華だった。
「お前らなんなんだよ!俺のことそんなに嫌いか!?」
「はい、嫌いです」
「うわああああああああああ!ムカつくううう!」
廊下のど真ん中で叫び散らす蓮華は、周りの視線を独り占めしていた。
俺は蓮華を落ち着かせようと近寄ったが、嫌われているので「来るな!」と言われてしまった。
すると横から昴があの包丁を取り出した。
「東藤さんになんてことを。謝りなさいハゲ・ハングリットゲーテ」
「うわああああああ何それええええ!てかなんでハゲが名前になってんの!名字を省略してハゲになったんじゃねえの!?」
周りの生徒も、昴が包丁を持っていることに驚いている。
まあ俺からしたら、もはや昴が何をしようと驚かないけどな。
時間が時間なので、俺は昴を呼ぶことにした。
「昴、行こうか。もう授業が始まる」
「かしこまりました、東藤さん」
昴はすぐに包丁をホルスターにしまって、俺のそばに駆け寄ってきた。
「じゃあな、蓮華。詳しいことは先生に聞いてくれ。職員室は一階の東階段近くにある」
迷子にならないようにある程度教えてやる。生徒会長だからな。
また余計なことが起きないよう、俺は昴を連れてさっさと教室に向かった。