結婚してください。パンツ見せてください。
それは一瞬だった。

俺の体は宙に舞い上がり、一気に地面に叩きつけられた。

「ぐぇ」

醜い鳴き声がでる。

どうやら投げ飛ばされたらしい。一本背負い、というものだ。

昴がどうしてそんな技を使えるのかはわからなかったが、まずは本気で文句を言ってやろうと、背中の痛みをこらえながら起き上がろうとした。

だが、急に視界が薄暗くなる。倒れている自分の上に、何かがあるみたいだ。

俺はその"何か"を見上げた。


そこにあったものは、


「っんなぁああぁあ!?」


パンツだった。




しかし、これでは意味が通じないので詳しく説明しよう。

実は、倒れている俺の目の前で昴がまたがっているのだ。しかもパンツが見えやすいようにスカートを少し上へ持ち上げている。



「どうでしょう、見えますか?」

「ななななななにしてんだテメェはああああああああああ!!」


慌てて両手で視界を遮り、パンツを見ないようにした。

それを見て昴は不思議そうに言った。



「なにって……パンツを見せないと通らせていただけないのでしょう?」

「真に受けんなアホ!てか誰がこんな見せ方しろって言ったよ!もっと違う方法があるだろ!」

「スカートをめくるのは女性としてはしたないので」

「これはいいの!?はしたなくないのか!?」


俺が大声を出したせいか、グラウンドの方から誰かがやって来た。




「何をしているんだ昴!」


東藤だ。俺達の様子に驚き、全力で駆けつけてきたみたいだ。


「東藤さん」

昴は俺の上からサッとどけ、すぐに東藤の元へ駆け寄った。


「申し訳ございません、東藤さん。お水を汲んでくるハズが、蓮華さんに足止めされて……」

「なんだと!?」

「抵抗したんですが『パンツを見せないと通さない』と言われ、仕方なくあのようなことを」


あたかも俺が悪いかのような言い方。内容自体は事実だけどね。


「違う!」と弁解しようとしたが、東藤に鋭い目付きで睨まれ怯んでしまった。



「見損なったぞ、蓮華」

「違う!そいつが……」

「話しかけないでくれ変態。昴は俺にだけは嘘をつかないんだ」

「うわぁ!何その信用!ひでぇ!」


東藤は俺を軽蔑的に見下ろし、昴と去っていってしまった。




一人残された俺の周りに、淋しげな風が吹いた。
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