結婚してください。パンツ見せてください。
次の日の朝。

俺は昴に仕返しとして嫌がらせをしてやろうと計画を企てた(くわだてた)。


作戦その一、登校中にしつこく話しかける。


「ねえねえ昴ちゃーん、おはよー」

「変態ハゲが気安く話しかけてんじゃねえよ。鼻血出しすぎて死ね」

「…………」


失敗に終わった。





作戦その二、後ろから驚かす。


「わっ!」

「あ、有栖川さーん」

「ちょ、無視とか」


またも失敗に終わった。






作戦その三、勝手にお弁当を食べる。


「これって東藤クン用のお弁当?いっただきー」

「あ」

「むぐっ……、!?」


――バタッ


「睡眠薬が入ってる……って、遅かったですね」

またまた失敗に終わった。






作戦その四、部活中に無茶ぶりをする。


「昴、ユニフォーム洗ってこいよ。急いでるから一分で」

「すでに洗ってあります」

「……あ、あらそう?」


はい失敗。







どうやっても上手くいかない。どうやっても昴に恥をかかせられない。
どうやったらあの憎たらしい女をぎゃふんと言わせるができるのか。

頭をフル回転させて考えた。

部活中にベンチで。


「蓮華、練習始まってるぞ」

「あ、加藤。ごめん」

「ベンチでなに考えてるんだ?具合でも悪いのか?」

「いや全然大丈夫」

「初めて来たんだし、とりあえず見学しろよ。チームの練習でも見てさ、慣れていけばいいさ」

「あぁ、ありがとう」


昔から変わらないな。進を見てるとそう思う。
昔と同じで優しく、自然で綺麗な茶髪が印象的だ。

そして何より……。


「……背、伸びないな」


背がすごく小さい。


「次それ言ったら、ヒモなしバンジーやらせるからなハゲコラ」

「それバンジーじゃない。ただの飛びおり。加藤までハゲとか言わないで」


毒舌で怖いのも相変わらずだ。

進が練習に向かい、一人になってしまった俺は、また考えていた。昴のことを。

「……なんで無表情なんだろ」

今日一日昴を追いかけて過ごし、不思議に思った。

どんな時でも無表情で、どんな時でも棒読み。
まるで全てに興味がなく、拒絶したかのように。


なんだか、嫌がらせや仕返しより、ただ純粋に昴の感情の変化が見たい。

俺は次第にそう思うようになった。
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