結婚してください。パンツ見せてください。
彼女はお弁当を作ってきたようです。
あれから。
似たような日々が続いた。
朝登校していると告白され、学校で授業を受けていると告白され、帰っていると告白され、家では電話で告白され。
まあ告白されてる。
彼女の名前は仙崎 昴(センザキ スバル)というらしい。
俺の一つ下の高校一年生だ。
弟と同じクラスだったため、情報は得られる。
最近では慣れてしまい、別に気にしなくなった。
「東藤さん」
「やあ仙崎」
「結婚してください。パンツ見せてください」
「結婚もパンツも断る」
嗚呼、なんだかこんなことに慣れてる自分が悲しいよ。
しかし、変態な性格を除けば容姿とスタイルともにパーフェクトなんだよな。
染めたであろう短い銀髪が、少し揺れる。
うーん、美人だ。
「東藤さん」
「なんだ」
「私、東藤さんのためにお弁当作ってきたんです」
「え?」
しまった。
不覚にもドキッとしてしまった。
「どうぞ」
「……」
ここで一つ聞きたい。
「……二つ?」
「はい」
「……二つ?」
「はい」
二回聞いたがダメだった。
考えてみるか。
差し出されているのは花柄とハート柄の二つの弁当。
そう、二つの弁当。
考えられるのは三つ。
一つは、俺が大食だと思われている。
二つは、一緒に食べようという意味。
三つは、なんかの予備用。
その三つくらいだろう。
だが、その三つじゃあ俺に被害はない。
いつもなら俺に被害のありそうな変態要素が入っているはずだ。
なんだ、なんなんだ?
正直食うのが怖い。
だが、女性からの好意である手作り弁当を疑って拒否するのは失礼すぎやしないか?
そんなもの男ではないな。
よし、ここは男らしく食ってやろうではないか。
「仙崎」
「はい」
「なぜ二つなんだ」
でもやっぱり怖いから聞いておく。
「……」
仙崎は黙って、花柄の弁当を差し出した。
「媚薬入り」
次に、ハート柄の弁当を差し出した。
「睡眠薬入り」
………………。
「どちらにします?」
「……フッ」
俺は今日。
「すまない、自分のがあるんだ」
男を捨てた。