結婚してください。パンツ見せてください。
彼女は東藤と喧嘩したようです。
「昴、すーばーるー」
「うるさいですハゲ」
「いやハゲてねえし」
……あ、東藤です。
忘れられてる東藤です。
何やら俺の出番が減ったかわりに、蓮華と昴が仲良くなっているんだが。何があったというんだ。
そしてなぜ登校中の俺と昴の中に蓮華が混ざっているんだ。
誰か説明してくれ。
「あまり近づかないでください、臭いです」
「臭くねえよ、失礼すぎるだろ」
「私は東藤さんと登校してるんです」
「俺いるだけだし。俺の勝手だろ?」
上機嫌な蓮華に対し、昴は不満そうだ。だが、どこか照れのようなものを感じる。なんだ、なんなんだ。
なんでそんな仲が良い。
「す、昴……」
「はい」
「いつから、蓮華と、そんなに仲良くなったんだ」
「仲良く、ですか?私はそんなつもりは……」
「ほぅ?俺から見たら仲は良く見えるぞ」
あ、やばいな。俺もしかしてすごくカッコ悪いかもしれない。
ネチネチ嫉妬して……。
……いや、違うぞ。嫉妬じゃない。それじゃあ俺が昴を好きみたいじゃないか。
「申し訳ありません、せっかくの登校時間にこのような虫を……」
「虫って俺か、俺なのか」
「今すぐ追い払います」
「ちょ、無視とか」
俺は深く息を吸い、ゆっくり吐き出した。よしよし、大丈夫。俺は冷静だ。
「いや、昴。いい。蓮華がいても問題ない」
昴は少し目を丸くさせ、驚いた表情をしてみせた。
「三人で仲良く登校しようじゃないか。友達なんだし」
わざとらしく『友達』という言葉を強調させる。
なんだか少し胸が痛い。なんだこの痛みは。
「……あ、忘れていた。今日は生徒会の大切な用事があるんだ。俺は先に行くから、あとは二人で」
俺は痛みから逃げるように、その場から去ろうとした。
「東藤さん、私もご一緒します」
「お前は必要ない。蓮華と行けばいいだろ」
自分でも思ってないことを口にして、少し後悔する。
あぁ、なんか俺らしくない。
早く行こう。そして頭を冷やそう。
「くくっ」
「……何がおかしい、蓮華」
後ろから蓮華の笑う声が聞こえ、不愉快に思う。
蓮華はニヤニヤと嫌な笑みを浮かべた。