結婚してください。パンツ見せてください。
さて。昴に思いを伝えるとは言ったものの、昴がどこにいるのか分からない。
教室にはいなかったし、サッカー部の部室にもいなかった。
ここまで探していないなんて。早退でしたのだろうか。
「……」
不思議なものだ。いつもなら昴の方が俺を探し、ストーカーするのに。
どうやら昴がそばにいる事が習慣になっているみたいだ。心のどこかで、昴が隣にいるのが当たり前のことだと思っていたのかもしれない。
「あー、くそ……」
やばい、不安だ。
こんなことで本当に離れられるのか、俺。
というか、わざわざ離れなくてもいいかもしれない。とりあえず昴と話し合って、それから判断すればいいじゃないか。
いや、これは断じて甘えではないぞ。昴と離れるのが嫌になったわけじゃない。ただ、こういう考えもあるんだって話だ。
って、俺は誰に話してるんだ。
……俺ってこんなに優柔不断で挙動不審だったか?
なんだか自分でも分からなくなってきた。
廊下の隅で項垂れて(うなだれて)いると、後ろから聞き覚えのある声が聞こえて振り返った。
「奈々緒!」
「え、お兄ちゃん? なに、どうしたの?」
そうだ、奈々緒はたしか昴と同じクラスだ。
「昴を知らないか」
「仙崎さん? えーと、なんか有栖川さんとさっきまでいたよ。なんか部活の話があるみたいで」
「そうか、ありがとう!」
有栖川は今日サッカー部の仕事で朝から保健室に用があったはずだ。運がよければ会えるかもしれない。
俺は生徒会長なのを忘れ、全力で廊下を走った。