結婚してください。パンツ見せてください。
保健室の近くまで来ると、いいタイミングで有栖川の姿が見えた。今まさに保健室に入ろうとしているところだった。
俺は息切れのせいかあまり声が出ず、かすれた声で有栖川を呼んだ。
「はぁ……あ、有栖川!」
「え、あ、東藤さん!? き、来ちゃダメです!いま、その大変なんです!」
どうしたのか、有栖川は俺を保健室から離そうとする。保健室に何かあるみたいだ。
「保健室に用があるわけじゃない、昴を探してるんだ」
「せ、せんざきさん!? し、し、知りませんっ!」
……嘘の下手な子だ。
「急な用事なんだ。頼むから教え……て…」
言いかけている時、保健室の扉から中が少しだけ見えた。
――昴と、蓮華?
止める有栖川の声も聞かず、俺は保健室に駆け込んだ。
「東、藤さん……」
入ってきた俺を、昴が目を丸くさせながら見つめた。
だが俺は昴よりも蓮華を見る。
「……昴に何をした」
「何怒ってんの、東藤クン」
「何をしていたかを聞いているんだ」
「見てたんだろ? 言う必要ねえじゃん」
おどけた態度をとる蓮華にひどく腹が立った俺は、蓮華の胸ぐらを思い切り掴み壁に押し付けた。
「答えろ」
自分でも驚くほど低い声が出た。
俺がここまで怒るのにも理由はある。
保健室の扉から見えた二人の姿。
「昴に、無理矢理キスをしたのか……!?」
俺がそう言っても、否定もせず肯定もせず。蓮華は余裕な態度を崩さない。
「わかった、お前がそのつもりなら俺にも考えがある」
俺は蓮華に向かって拳(こぶし)を振り上げた。
「殴ってから聞くとしよう」