結婚してください。パンツ見せてください。
「ダメです、東藤さん!」
甲高い(かんだかい)声が響き渡る。それと同時に俺の体は小さな体に押し倒される。
一瞬、有栖川かと思った。なにせ、こんなに感情のこもったあいつの声なんて初めて聞いたからな。
「昴……」
空中に放り出された俺の拳は行き場を失い、そのまま解けて(ほどけて)床に落ちた。
昴は俺の腰回りに抱きつき、俺が蓮華を殴るのを止めてくれたみたいだ。
俺は軽く尻餅をついたあと、落ち着いて昴に話しかけた。
「止めてくれてありがとう、昴」
ありがとう、なんだけど。
「ただ、ベルトをはずそうとしないでくれるか」
「……チッ」
「舌打ちするな」
この女は、どんな時でもパンツが見たいのか。
まぁ、そのおかげで頭は冷えたがな。
「……蓮華」
いまだに壁に寄りかかっている蓮華を見ると、つまらないような表情でこちらを睨んでいた。
俺はとりあえず立ち上がり、昴をうしろへやった。
「もう一度聞く、昴に無理矢理キスをしたのか」
蓮華は少し顔をしかめ、ため息をついた。
「だったら? 東藤クンに何か関係あんの?」
「……お前、自分が何をしたかわかっているのか」
薄ら笑いを浮かべ、馬鹿にした態度をとる。俺は冷静になろうと努力するが、声がどうしても張ってしまう。
チラリと保健室の扉を見ると、有栖川の姿が見えない。恐らく進を呼びに行ったんだろう。賢い子だ。
俺は進が来る前にこいつと話をつけよう。
「あのよ、さっきから何で東藤クンにそんなこと言われなきゃならないわけ? 人の恋愛に口出すんじゃねえよ」
「恋愛だと? 無理矢理キスするのは違うだろ!」
「だーかーら、口出すなって言ってんじゃん。関係ないくせに」
「関係ないわけないだろ! 昴は俺のこと……、昴は、俺の」
なんだ、言葉がでない。
あれ、どうしたんだ俺。
「……俺の、なに?昴は東藤クンの何なんだよ」
――昴は俺の、なんだ?