結婚してください。パンツ見せてください。
「高校生にもなって何殴り合いなんて青春くせぇことしてんだよ。現実をみろ、現実を。俺の迷惑を考えろや」
進の言っていることは正しいのだが、それを言ったらほとんどの小説終わるぞ。恋愛小説に青春とったらどうなるんだ。あと、最後のはお前の意見だろ。
「ちょーどいいや。加藤、有栖川さん。昴ちゃん頼む」
蓮華は昴を進達の所へ押し、俺の方へ向き直った。
「殴ってごめんね、痛かった?」
「……何ともない」
見栄を張ったがかなり痛い、痛すぎる。
蓮華はそんな俺を見て、急に真面目な顔をした。
「別に俺は昴がお前を好きだから嫉妬してるわけじゃねぇんだ。そんなもん、全力で奪ってやるし。……だけどな」
グイッと胸ぐらを掴まれる。
蓮華は青い瞳で、これ以上にないくらい俺を睨んだ。
「あいつの気持ちをはぐらかすのが、許せねえんだよ」
何も、言えなかった。言う資格すら、俺にはなかった。
「あいつはあいつなりに、本気でお前のこと好きだって言ってんのに。それを受け止めようともせず、ただ変態だのストーカーだの言ってはぐらかすんじゃねぇよ」
「愛のが抜けてます、愛のストーカーです」
「昴ちゃーん、ちょっと待ってて。俺今いいこと言ったから」
たしかに、間違っていたのは俺の方かもしれない。
ここに来る前も、俺はまだ昴といようとした。
どんな理由であれ、昴は俺を慕ってくれていたというのに。それを受け止めることも出来ないのに、答えすら出せていないのに。
昴を苦しめていたのは、俺なのか。
「あいつのそばにいてぇなら、お前のちゃんとした答えを出してからにしな。じゃねえと、俺が腹立って仕方ねえんだ」
「……」
「お前の都合で、昴の気持ち弄ぶ(もてあそぶ)なよ」
「……言われなくても、わかってる」
蓮華の手を振り払い、ゆっくり出口の方へ向かった。
「東藤さん」
昴が心配した様子でこちらに来た。俺は軽く笑って大丈夫だと伝える。
そして、
「昴」
――少し、距離を置こう