結婚してください。パンツ見せてください。
話をするために昴を連れて来たのは、外にあるサッカー部の部室。
昴はこの前、保健室で無理矢理キスしたから警戒してる。俺から距離をとって、出入り口のドアの近くから動かない。
俺は昴に向かって両手を広げながら言った。
「もうキスしないから、こっちおいで。抱きしめちゃうかもしれないけど」
「お断りします」
ちぇ、ケチだな。
昴に近づくのは諦めて、適当にそこら辺を歩き始めた。
「なぁ、俺のこと嫌い?」
ちょっと意地悪っぽく訊くと、昴は顔をしかめた。
「その質問は卑怯だと思います」
そりゃそうだな。
それでも俺はそれに反論する。
「けど、前は言ってたろ、嫌いだって」
「貴方こそ、私のこと嫌いだったんでしょう」
言われればその通りだ。
俺は以前、こいつのことが大嫌いだった。毒舌だし変態だし嫌な奴だし。
「まぁたしかに、嫌いだった。だけどさ」
だけど。
本当は繊細な心をしていて、意外に素直なトコロとかあって。自分の気持ちに一途で、照れ屋なツンデレだったり。
見ていると、色々なところが分かってくる。
そこに惹かれた。
そして、俺のものになればいいと思うようになった。
無表情なとこや棒読みなとこも、全部俺のもんになればいいのに。俺のために、その表情や声を変えればいいのに。
そう思うようになって、気づいたんだ。
「好きになっちまったんだよ、なんか」
これが愛じゃないなら、なんだっていうんだ。
俺がそう言うと昴はうつむき、突然顔をあげて言った。
「それは、勘違いです」