結婚してください。パンツ見せてください。
……え。
今もしかして、勘違いって言われた?
「貴方は、ただ私に同情してるだけです」
いつもより冷たい声で、昴は口を動かす。
「同情?」
俺が戸惑いながらも問いかけると、昴は静かに答えた。
「……私が」
『人殺しだから』
あぁ、あの事か。
「以前、貴方が保健室で私にキスをした時。私は貴方に、自分の過去を話しました」
昴は淡々と言葉を発する。
そう。
保健室で昴に無理矢理キスしたあの時。俺は昴の過去というものを聞いていた。
なぜ話してくれたのかはわからない。
俺が太ももにつけているナイフの事を訊くと、勝手に話し始めたんだ。
「貴方はそれを聞いて同情しているだけに過ぎないのです」
昴のこの発言に、俺は少しムカついた。
「たしかに、ありゃ驚いたよ。だけど、同情なんしてねーし。それと俺の気持ちとは別だろ」
「別ではありません。貴方の私に対する好意は単なる同情です。人殺しで親のいない私を、憐れんでいるのです」
「違う」
「違いません。貴方はバカで、優しすぎる。同情を愛と勘違いするほど」
「勘違いじゃねぇ」
「勘違いですよ。でなければ、私の事を好きになる理由が見当たりませんからね」
「やめろ」
「人殺しなんて、気味が悪いでしょう」
「やめろっつってんだろ!」
「私に、人殺しに、愛される資格なんてないんですよ」
――バンッ!
「……うるせぇ」
思い切り、昴を押し倒す。
昴はそれでも表情を崩さず、目の前にいる俺を見つめた。