結婚してください。パンツ見せてください。
進の殺気を感じ始めて約十分。俺の目の前に弁当が二つ運ばれて来た。
『とうとう勝負の時がやってきました!会場は緊張の渦に包まれています!』
『会場じゃなくて食堂だよね。そして緊張する意味がわからない』
『実況席でも加藤さんの激しいツッコミが飛んでいます!なんだかんだ言って張り切ってるんですね!』
『イラついてんだよ。わかって言ってんだろ』
進のイライラの原因である彼女の有栖川紗綾さんは、進より昴の方を向いて「まかせてね!」と言っていた。
天然な子だから、余計に進も心配しているんだろう。
弁当を運んで来た昴は、有栖川に頭を下げて礼をすると、俺達を交互に見た。
「……なぜ、こんなことに?」
さすがの昴ですら、呆れている様子だった。
仕掛けた張本人である俺は、苦笑いを浮かべる。
「俺なりのけじめだ。お前への謝罪と、蓮華との決着」
「……謝罪、ですか?」
「すまないと思っている。お前の気持ちに答えず、逃げて、嫌な思いをさせた」
「私は別に、嫌な思いなど」
「いい。俺のわがままでしかない。お前が気を遣う必要はない。そのかわり、見ててくれ」
必ず。
「勝ってみせるから」
俺がそう言い終わり、昴もそれ以上は何も言わなかった。
隣では蓮華が、つまらなそうな顔でこちらを睨んでいる。
空気が少し重くなると、見計らったように奈々緒のアナウンスが聞こえた。
『有栖川さんのスタートの合図と同時に試合を始めます。合図は、笛の音です。それでは、有栖川さん、お願いします!』
有栖川はフゥと一息つき、首に下げていた白い笛を咥えた。
それと同じくらいの時、俺と蓮華は箸を持つ。
――ピィー!
「始めっ!!」