結婚してください。パンツ見せてください。
「がぶぁ、むぐっ!んぐ、んぐ……」
弁当の中を箸で、口の中へと掻き込んだ。鉄のような味がする。アルミケースごと食べてしまったのだ。
それでも俺は飲み込んでやった。
周りからは笑い声や、たまに応援の声。
隣の蓮華を見てみたかったが、タイムロスになるので我慢する。
『こ、これは! 凄い戦いです! 両選手、アルミを食べている!! なんと激しく、熱い戦いなんでしょう!』
『それ以前に、危険すぎるので、読者の方々はマネしないでください。脳みそ足らずのバカがすることです』
進の毒を含んだ注意が聞こえたが、今はそれどころではないので無視することにした。
俺は上の段の弁当を食べ終わり、下の段に取り掛かろうとした。
その時。
――ドガッ!
急に視界が揺らぎ、体の重心を失った。そして背中を強く打ち付ける。
どうやら、転倒したようだ。
「っ、蓮華!! 貴様、プライドはないのか!」
俺はすぐに起き上がり、怒りを露わ(あらわ)にする。
卑怯なことに、蓮華は俺の椅子を蹴り倒した。
「悪いけど、俺はプライドより昴ちゃんを取るんだよ」
無様に倒れている俺を、憎たらしいドヤ顔で見下ろしてくる。
コイツいつか殺す、絶対殺す、必ず殺す。
『東藤選手、席に戻ったが、これはかなりのタイムロスだ!』
『てか、今のは反則じゃないのか? 明らかに妨害だろ。紗綾、どうなんだ?』
進が名前呼びのまま、審判である有栖川に問いかけた。
「蓮華さんが蹴ったのは椅子です。妨害の対象が東藤さん自身なら反則ですが、間接的な妨害は反則とは認められません」
そんなバカな。
『これは意外です! セーフになりました! どういうことでしょう、解説の加藤さん』
『解説って言うな。おそらくだが。紗綾は親友である仙崎を傷つけた悠吾を敵視しているんだ。それに、仙崎を一途に思う蓮華のことを応援しているのもあるな』
『つまり、贔屓(ひいき)ですね』
『まぁな』
それじゃ完全に俺が不利じゃないか!
そう言おうとしたが、有栖川に睨まれ怖くなり、無言で勝負に戻った。