妖将棋 <十二神獣と朱眼狼>

「六合の星詠みは外れない。なのに今回の星詠みは数年早まった。玄武よ、しくじったな」

 鉄の目隠しの奥から漂う、獲物を狙うような色。
 あまりにも冷たい殺気に、龍二は底冷えするような感覚に陥った。

「何をしくじるというのじゃ?」

「ではなぜ時が早まったか教えてやろう」

 そう言いながら、騰蛇は遥の首筋にある小さな傷を見せた。

「わずかだが、妖から受けた傷痕がある。遥自身も気付いていないほどの傷だが、妖や悪鬼は血に敏感な生き物だ。匂いだけで、禁は見破られる」

「まさか…!」

 じいさんの目が見開かれ、冷や汗を流しながら驚愕の顔を見せた。

「確かにお前の結界は強力なもの。だがそれは表面のみ。これは俺の推測にしかすぎんが、封印される前に羽根の式を飛ばしたのではないか?」

 別の物であろうが、騰蛇の手にはカラスの羽根が持たれていた。
 昨夜封印したのは八咫烏。

 八咫烏一族は、数多の伝達を送る、いわば情報屋。
 封印される前に自分の羽根をむしり、仲間に情報を伝えたと思われる。

 
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