妖将棋 <十二神獣と朱眼狼>
「いや~寝坊したらいかんじゃろ? 起こしてやらないかんのが、保護者ぢゃ」
もっともらしいことを言ってくれるが、言動と行動につじつまがあわない。
「起こし方に問題が大アリだ」
淡々と文句を言いながら着替えると、あくびをしながら部屋から出て行った。
じいさんはその背中を寂しそうに眺めた。
ゴスッ!
「高齢者なんだから、ちったあ礼節わきまえやがれ」
「を…をふっ…」
廊下にひっそりと置いてあった、何やらいかがわしさ大爆発なモノをじいさんに投げつけると、じいさんは力無く床に突っ伏した。
台所の入口に掛けてあったエプロンを着け、朝食の準備にかかる。
どうやらこの家には、じいさんと少年しかいないようだ。両親が今家にいない、もとより、存在していなかった。
それは雰囲気が物語っていたからだ。
昨日の夜の残りのみそ汁を温めなおしながら卵焼きを焼き、グリルでは鮭が程よく焼ける匂いがただよう。
卵焼きと鮭を皿に盛り付け、ご飯とみそ汁をよそい、ついでにじいさんの好きな漬け物をそえる。
隣の和室にちゃぶ台があり、準備する。
そこにはじいさんがちゃっかりと笑顔で座っていた。