妖将棋 <十二神獣と朱眼狼>
【またこの不貞の輩かい? いっぺん六合に説教させたらどうだい?】
声から推測すると、一世代前のヤンキーのねーちゃんのような声色。
遥は今までにされたことのない行動をされてパニクっていた。
「だ、だって、こんなときって誰喚んだらいいかわかんなかったし、それに、朱雀ねーさんのほうが頼りになるし…」
始めはあたふたと言い、次は髪を整えながら照れたように言うと、朱雀は感動のあまり、泣きながら炎の翼で遥を抱きしめた。
【ああんもう! ホントかわいい子だよ!】
不思議と熱くない朱雀の翼。
龍二に与えたものは、服や皮膚が焦げるほどなのに。
どうやら術者本人には何の影響もないらしい。
【またなんかあったら喚びな。あたしのかわいいご主人】
そう一言言い残すと、朱雀は一枚の霊符になって消え、机の上に置いてある手帳の中へと収まった。
大きく背伸びをしながら部屋を出ようとすると、奇妙な紐を持ったじいさんと出くわした。
「それ何」
「何とは何ぢゃ! ちょっと楽しいことになっとらんかと思い、遥を縛りに!」