妖将棋 <十二神獣と朱眼狼>


【またこの不貞の輩かい? いっぺん六合に説教させたらどうだい?】

 声から推測すると、一世代前のヤンキーのねーちゃんのような声色。

 遥は今までにされたことのない行動をされてパニクっていた。

「だ、だって、こんなときって誰喚んだらいいかわかんなかったし、それに、朱雀ねーさんのほうが頼りになるし…」

 始めはあたふたと言い、次は髪を整えながら照れたように言うと、朱雀は感動のあまり、泣きながら炎の翼で遥を抱きしめた。

【ああんもう! ホントかわいい子だよ!】

 不思議と熱くない朱雀の翼。
 龍二に与えたものは、服や皮膚が焦げるほどなのに。
 どうやら術者本人には何の影響もないらしい。

【またなんかあったら喚びな。あたしのかわいいご主人】

 そう一言言い残すと、朱雀は一枚の霊符になって消え、机の上に置いてある手帳の中へと収まった。

 大きく背伸びをしながら部屋を出ようとすると、奇妙な紐を持ったじいさんと出くわした。

「それ何」

「何とは何ぢゃ! ちょっと楽しいことになっとらんかと思い、遥を縛りに!」

 
< 31 / 83 >

この作品をシェア

pagetop