妖将棋 <十二神獣と朱眼狼>
「やっぱり朝食は和食に限るのぅ。最近腕を上げたのではないか遥?」
みそ汁をすすりながら笑顔で言うと、遥と呼ばれた少年は鮭の皮を皿の端に寄せながら言葉を返した。
「隣のおじさんがいい鰹節の塊くれたからじゃねーの?」
「そじゃの」
さっきまで腕を上げたという褒め言葉はいったいどこへいったのか?
じいさんは鰹節のおかげだということにすり替えてしまった。
「しっかし、最近のニュースは物騒ぢゃのう。奇妙な事件ばかりが起こっとる」
「俺の知ったこっちゃないね。ごっそさん」
もう平らげてしまい、片付けし始める。
「洗い物頼んだぞ。今日から俺バイトだから、テキトーに冷蔵庫の中の物食っててくれ」
「今日は入学式ぢゃろ? 行ってやろうか?」
「来たら吊す」
高校生にもなってじいさんは入学式にでたかったらしいが、遥はじいさんの魂胆を解っていた。
表面ではなかなか見せないが、かなりの色ボケジジイで、遥の友達の女の子ですら鼻を伸ばす始末。
入学式に来たら自分がとんでもなく苦労するのが目に見えているため、断固拒否ったのだ。