妖将棋 <十二神獣と朱眼狼>

 今度はマネージャーのバッジをつけた田所が、タバコを補充しながら言った。

「あたしも、これほどとは思わなかったわ…」

 維鳴はというと、フライヤーのほうで壁にもたれていた。

「に…人間社会とは…なんと恐ろしい……」

 まるで地獄を見たような表情で、わけのわからないことを口走っていた。

(あいつ…まだ山から降りてきたばっかだったのかな?)

 遥は維鳴のその一言でそう思い、なぜかそれが面白いと思ってしまった。

「そろそろ深夜組の交代時間だし、補充しに行きますか?」

 遥が言うと、田所が振り分けて指示を出した。

 全員がテキバキと動き、深夜組が来る頃には、もう出来上がっていた。

「おつかれさ~ん。大変だったろ?」

 細マッチョな青年がやってくると、香川は疲れ果てたように言葉を返した。

「も~大変なんてもんじゃなかったスよ~宇喜田センパイ。俺達、浸水するとこだったっス…」

 全員が頷くと、宇喜田はわははと笑った。

「やっぱりな~。後は店長と俺に任せときな」

「店長、深夜に来るんですか?」

 
< 41 / 83 >

この作品をシェア

pagetop