妖将棋 <十二神獣と朱眼狼>
今度はマネージャーのバッジをつけた田所が、タバコを補充しながら言った。
「あたしも、これほどとは思わなかったわ…」
維鳴はというと、フライヤーのほうで壁にもたれていた。
「に…人間社会とは…なんと恐ろしい……」
まるで地獄を見たような表情で、わけのわからないことを口走っていた。
(あいつ…まだ山から降りてきたばっかだったのかな?)
遥は維鳴のその一言でそう思い、なぜかそれが面白いと思ってしまった。
「そろそろ深夜組の交代時間だし、補充しに行きますか?」
遥が言うと、田所が振り分けて指示を出した。
全員がテキバキと動き、深夜組が来る頃には、もう出来上がっていた。
「おつかれさ~ん。大変だったろ?」
細マッチョな青年がやってくると、香川は疲れ果てたように言葉を返した。
「も~大変なんてもんじゃなかったスよ~宇喜田センパイ。俺達、浸水するとこだったっス…」
全員が頷くと、宇喜田はわははと笑った。
「やっぱりな~。後は店長と俺に任せときな」
「店長、深夜に来るんですか?」