妖将棋 <十二神獣と朱眼狼>
タバコの銘柄を覚えようとメモしている遥に聞かれ、宇喜田は頷いた。
「メイクし直してから来るってメール来たぞ」
オネェのメイク時間はかなりの時間を要するんだなと、店員全員が思う一言だった。
『お疲れ様でした~!』
四人は宇喜田を残し、帰路についた。
自転車置場で別れ、また遥は維鳴と一緒に帰ることになってしまった。
いつでも符呪を唱えれるように、ある程度の永唱を終えて。
「警戒しまくりだね?」
「当たり前だ。さっきみたいになりたくないからな」
ギロリと睨むと、余裕釈々と笑みを見せた。
「かわいい顔がだいなしになっているよ」
ぷいっとそっぽ向き、何も喋ろうとはしなかった。
「なぜ僕が、人間社会に来たか、わかるかい?」
「?」
「総ての妖一族が住み処を追われ、行き場を無くし、結局はその場に合わせた数になるように衰退してしまったからなんだ」
昔は妖一族に追われていた人間が、今度は逆に追うように追い詰めてしまった。